人の渇望が固有の魔法になる異世界。固有魔法を扱い邪神から人類を守護する超越者〈アデプト〉たちには、あらゆる権利が与えられる。
転生したコノエは永い修行の末、遂にその資格を得たのだった。
――惚れ薬を使うために。
「……惚れ薬があれば、僕でも、誰かの一番になれるんだろうか。」
前世のトラウマから、人を信じられず生きてきたコノエ。そのせいで固有魔法が発現せず、転生しても孤独に苦しんでいた。そんな彼に助けを求めてきたのは、死病に侵された金色の少女で――。
「私、コノエ様の為なら何でもさせて頂きますので!」
これは、渇望を持たない白い孤独が、黄金の愛と出会う物語。
「2024年おすすめ小説10選」でも掲載した「転生超越者は胸の穴を埋めたい」改め「転生程度で胸の穴は埋まらない」が電撃文庫より1/10(金)に発売されました。購入して読み返してきたため再度紹介致します。
精神的に傷を負っている主人公「コノエ」が世界を救っていくという作品で、1巻では、主人公が後ろ向きで自信の無さが浮き彫りに出ています。
いやweb版のほうで全話読んでいるから驚きましたが、コノエの会話文、少なすぎるでしょう……!「……」が一体いくつあったんだ?というくらい喋っていない。その理由は、自分自身でも何をしたいか分かっていないのです。ぽっかり空いた穴をどうやって埋めたらいいのか、分からないゆえなのです。
コノエは生真面目でもあります。自分自身も分からないのに、他者から請われたため、人間を救うため、全力で物事に取り組みます。ただ、作中でコノエはその生真面目すら容認しません。「それしかすることがない」と言うんです。家族との団欒、友人との談笑、知人との雑談すべてを知らないからです。
そんなもの悲しい主人公は、一人の少女「テルネリカ」を救います。テルネリカは全てを救ってもらい、コノエに寄り添うことにします。何を考えているのか判断が難しいコノエの傍にいるのは難しく、距離も掴みにくいのですが、全く苦にしていません。
コノエの悲嘆とテルネリカの献身という対比が、1巻における最大の見せ場だと思います。
それから、魔物との戦いも見どころの一つです。主人公サイドも敵サイドも「固有魔法」というその人にしか扱えない魔法というものがあります。それらで戦っていくわけなんですが、個人的には戦闘を盛り上げるフレーバー程度で、主軸ではありません。
この作品は「愛」ゆえに悩み「愛」ゆえに戦うんです。愛を感じることができる戦いは、中々他作品でも見ることはできません。オンリーワンなこの作品を、ぜひともご堪能してください。非常にオススメです。
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