【書籍】貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士2巻

現代日本から男女の貞操観念が真逆の異世界へ転生し、その世界では珍しい男騎士となった辺境領主ファウスト。彼は第二王女ヴァリエールの初陣を成功させ、反逆者カロリーヌの遺児マルティナを自らの誉れのために助命嘆願し引き取った。
ポリドロ領に帰還し穏やかな日々を送るファウストだったが、またも王都に呼び出され、今度は隣国ヴィレンドルフへ和平交渉の使者として赴くことに。リーゼンロッテ女王から、和平交渉の成否は「冷血女王」――ヴィレンドルフのカタリナ女王の心を斬れるかどうかにかかってると助言を受けるが……?
貞操が逆転した世界で“誉れ”を貫く男騎士の英雄戦記、待望の第二幕!!

道造

貞操逆転ものながら熱狂的な物語が展開される「貞操逆転世界の童貞辺境領主騎士」の2巻が発売されましたので紹介致します。Web版に関しては以下からご覧ください。

小説概要

前の一巻と同様、ギャグとシリアスの塩梅が絶妙で、滑稽すぎず、強張こわばりすぎずに読むことができます。貞操逆転世界ゆえ女性の無防備さに主人公のファウストがどぎまぎしたり女性陣の欲望が剥き出しだったりする一方、和平交渉という大役のための準備や隣国ヴィレンドルフの思惑が作品に緊張感を与えます。

中終盤に向けて徐々におごそかな雰囲気を強めていき、ヴィレンドルフ女王、カタリナとの謁見でピークを迎えます。最初は軽やかに読めていたのに、段々と読むことに傾倒してしまいました。作者の道造氏の巧妙さが伺えます。

2巻について

2巻のテーマは「家族愛」で、思わず泣きそうになってしまいました。

ヴィレンドルフ女王のカタリナは出産の際に母を亡くし、感情が理解できず機械的にしか受け答えできませんでした。ただヴィレンドルフの英傑レッケンベルが親身になり、レッケンベルが死んだあとにようやく「悲しみ」を知ることができました。それでも「悲しみ」しか分からず、レッケンベルに打ち勝った主人公のファウストに更なる何かを期待します。

ファウストは、母からの愛を理解することが中々できず、贈り物などは領民にくれてやってる始末でした。死の間際、自身に対して謝る母を見てようやく愛を理解し母に懺悔しています。

主人公と女王ともに、深く愛してくれた存在がおりました。これらを熟達した構成で、和平交渉の場に持ってくるテクニックは脱帽ものです。感動で泣きそうになってしまいました。

絵について

1巻よりも絵は抜群に良く、正直驚きました。

まず表紙がカッコいいです。中の絵もヴァリエールやマルティナが可愛いです。そして謁見ラストの絵がストーリーとマッチしていて神がかっていました。

外伝について

書籍のみで読める外伝「小領主の死」「カタリナIFグッドエンド」それから各店舗の特典「結婚の約束?」「フリューゲル号の来歴について」も読みました。「小領主の死」がとてもよかったです。ファウストの母の話はいつだって感動的です。店舗ごとの特典はやや複雑なので作者のツイートを見てください

Web版と書籍の違いについて

  • プロローグ「騎士見習いマルティナ」が追加されています。1巻の内容をマルティナ視点で振り返っており、読者に前回の話を思い出させる意図があるのでしょう。
  • 全編に渡り多くの加筆修正が成されています。1巻しか読んでいない読者のため、改めて説明している部分が多くありました。また、体言止めの多さが是正されております。特にヴィレンドルフ女王、カタリナ視点の話は威厳のある文体になっておりました。
  • 上述の通り、書籍版のみで読める外伝があります。母の話がグッと来ます。

最後に

万人にオススメできる傑作でした。ぜひ購入することを勧めます。

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