『この世界は、私のために回っている――』
謎の万能感とともに永い眠りから醒めた少女ミツバ。
しかし、継母はミツバの覚醒を快く思っていなかった。継母の策略で、ミツバは貴族名を取り上げられたあげく、士官学校に入学することになってしまう。
ところがミツバには、ぼんやりとした異世界の記憶と、無自覚に発動する呪いの力が宿っていた……。
これは、周りの人々に畏れられながらも異能の力でわが道を突き進む少女の生き様を描く、異色の異世界蹂躙譚。
「死神を食べた少女」「勇者、或いは化け物と呼ばれた少女」等、ダークな世界観を戦記物やファンタジーに融合させ怪作を生み出してきた作者、七沢またり氏による小説です。
本作はweb上でも見ることが出来ますので、もしこちらのほうが良ければお読みください。私は信者なのでお金を払います。
本作、まず表紙が可愛いさもあるんですが不気味です。今まではシリアス調で可愛さがあったんですが、本作は不気味さのほうが強いです。
小説の内容も、氏の小説の中では一番ダーク寄りになっています。
氏の小説の作中主人公はみんな、何かしらの目的を持っていたんです。「死神を食べた少女」なら食欲が、「勇者、或いは化け物と呼ばれた少女」は何を求めているかは明白でした。
本作主人公は、目的がないんです。いや、もしかしたらあるかもしれません。それは「悪意」「全てを地獄に叩き落してやりたい」という破滅的な願望が見え隠れしています。これが本筋で他は些事なんです。
その結果、今作は呪い染みた不気味な小説となっています。戦記ものというよりは、ホラー寄りな印象を受けました。砲兵としてドンパチやっている、というよりは呪い殺しているほうが近いです。
1巻までは自身に悪意を抱いている対象や蔑ろにする対象にしか攻撃していませんが、今後どうなるのか、先が全く見えません。ただ平穏でないことだけは分かります。今後血みどろの戦が始まっていくのでしょう。
氏のダークな要素が満載の作品になっています。非常におすすめですのでよければお読みください。
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