【エッセイ】出て行くか、払うか──家賃保証会社の話

出て行くか、払うか──家賃保証会社の話(0207) - カクヨム
家賃保証会社の管理(回収)担当者のお話。ノンフィクションです。

家賃保証会社の管理(回収)担当者が書いているノンフィクションです。延滞客、不動産会社や、生活保護受給者を管理指導する(しない)福祉課職員、そして彼らを相手に仕事をする管理(回収)担当者のお話です。
※家賃保証会社は商品(サービス)から管理(回収)の方法、考え方等々、色々と会社により異なります。殆ど全社に共通する部分もありますが、一部の会社にしか当てはまらないものもあります。

0207 – カクヨム

家賃保証会社という、滞納している家賃の管理(回収)を行っている会社員によるエッセイです。正義にも悪にもなり切れない知的な筆者が、滞納者を通じて社会の闇・問題点に触れます。

賃貸を滞納する人というのは、社会的弱者が多く、実際に多くの社会的弱者について取り上げられています。どうやって滞納者に支払わせるか、退去してもらうか、一から筆者の主観を交えて紹介していきます。

衝撃的な内容が多く例えば、筆者が死体を見慣れていてどうやったら短い時間で切り抜けられるかよく知っていること、滞納者の言い訳がほぼ同じパターンで読んだだけの私でもイライラすること、善意をあだで返す割合が多いこと、地域によって行政が機能していないこと、どれも凄まじい内容でした。

内容も物凄いんですが、個人的に一番驚いたのは、精神に異常をきたすような恐ろしい環境であるのに、自分のできる範囲で、できるだけ誠実でいようという筆者の姿勢でした。

もちろん筆者も人間ですから、心の中で滞納者に対して死んでほしいと思っていたり、ノルマをクリアするため短時間で最大効率を取ろうと退去後の面倒を見なかったりもあります。

ただ、滞納者が従順であるのであれば、福祉施設等の手立てを斡旋(生活保護費支給の手伝い・一時保護施設への入居の推薦等)したり、無理な取り立てはせずにできるだけ穏便にすませる方向性で管理(回収)業務を行っていたりする様はまさにプロです。

また文体もできるだけ客観的に書こうと努力されていて、好感が持てました。筆者は自身を正義とも悪とも思っておらず、会社員としてできることをやっているだけと思われてるようですが、私はこのような地獄の環境で冷静さを保って業務できているだけに正義寄りだと思いました。

社会の闇・問題点について知りたい人にはおすすめです。

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