完結 勇者であるオスカーは、悲願である魔王討伐に何度も失敗し、その度に過去に戻ってやり直していた。どれだけ強くなっても魔王を倒せず、彼の心は犠牲になった命への罪の意識に囚われていく。
しかしある時過去に戻ると――勇者オスカーは可憐な少女にされていた。
姿形は変わろうと、悲願である魔王討伐を為したい。どこか陰のある元勇者のTS少女は、勇者パーティーの一員となって、魔物たちと戦う。共に戦うのは、かつての仲間、それから人生一周目の未熟な自分。
恥谷きゆう – 小説家になろう
過去に囚われた元勇者の少女は、死に物狂いで戦い続ける。
魔王に勝つため逆行し続ける勇者が、TSして逆行することもできなくなり、元々の自分と共に魔王討伐に向かう話です。
主人公が逆行し続けた結果、擦り切れています。過去に失敗した出来事に対して強いトラウマを持っており、結果として自罰的な性格になり、自傷を厭わない狂気的な戦い方で辛うじて魔物に勝利します。
悪夢として主人公の過去を振り返るんですが、あまりにえげつない最期が多く、同情してしまいます。生きたまま食われたり、幼馴染を殺してしまったり、信頼している仲間から糾弾されて絶望したり、数多くのバッドエンドを見れます。トラウマになるのも当然でした。
また、敵役も含めて、全ての登場人物が魅力的でした。ヒーラーの幼馴染は場を明るく取り成すムードメーカーで、主人公含め全員の支えになっていましたし、魔法使いは貴族出身故に物腰柔らかく丁寧に話しながらも、勇者たちとのやり取りを楽しんでいました。朗らかさが主人公の癒しとなっていきました。
敵役としては、美食家のオークに気位高い吸血鬼、人の姿をした人魚などが出てきます。全員、人類を家畜以外の何とも思っておらず、主人公の心に傷を作っています。ただそれぞれに思惑、種族特有の価値観を持っており、背景が緻密に練られています。悪役たちの外道っぷりが存分に楽しめます。
TS要素も強いです。筋力が低下していることを嘆いたり、騎士に慕われることを気持ち悪がったりもします。仲間と一緒に女風呂に入ることを嫌がったり、着せ替えられることに抵抗があったり、TSものの王道もあります。
曇らせ・TS・英雄譚が入り混じった傑作です。非常におすすめします。
※ハーメルン、カクヨムでも連載されています。読みやすいサイトでご覧ください。
コメント