
人類が環境に適応出来なくなった遠い未来。人類は地球を捨てて新たに観測した惑星に移住する事が決まった。
その新惑星への航行期間は約2500年、超巨大宇宙航行船には1機当たり約1億人の様々な人種、職業、世代の人類が乗っており全52機。
その1億人はA~Fまでの6つのグループに別れコールドスリープをしていて100年に1度交代でグループが覚醒し1年間1つの都市が丸々入った居住フロアで航行船のメンテナンスや体調管理、教育なども行われる。
ある日Bフロアの1度目の覚醒が行われ青年は最初の1年を過ごしていた。ある日ひょんなことから棚の裏に『Why are you here?(おまえは何故ここにいる?)』というラクガキを見つける。
100年前の入居者が残したものだった。仕事のトラブルによる修羅場をくぐり抜け紅茶を1杯飲みながらふとあのラクガキに答えを書いた。そしてまた次の入居者がそれを見つける。数珠繋ぎの話。
滅びゆく地球を捨ててノアの箱舟のように新天地を目指す、純SF小説です。世界観設定が見事で、スッと作中に入ることができました。
終わった話として作中で語られていますが、地球が滅ぶと分かってから人類という種を残すために必死で研究に取り組む様が印象的でした。正に人類種を残すための生存競争ともいえ、余裕というものが全くなく厳しい環境です。
そんな生存競争を経験し箱舟への搭乗権を得た第一の主人公は、あまりに厳しい勉学に今も苦しんでいます。蹴落とした他者のためにも、自身が学んできた意味を持たせるためにも、強迫観念を持ちながら箱舟での移住を成功させようと働きます。この辺の塩梅が素晴らしかったです。
それから、0.3%未満の悪魔という何とも不穏なキーワードも好きです。悪魔が一体何なのか、本当に移住することができるのか、非常に楽しみです。
web小説では中々見ないジャンルですので、もし興味がありましたらぜひご覧ください。
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